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ブギーポップ・クエスチョン『沈黙ピラミッド』 感想 [ラノベ感想]

絶望ってなんですか@常磐です。


3連休は動画作成を放置して風神録ばっかりやっています。
霊夢B(封魔針)でノーマルノーコンティニューで最終面の最後のスペルまで粘ったのですが、
最後の耐久レースに負けて終了orz

あと20秒粘れればクリアだったのに…


気晴らしに外に出てみれば久しぶりの青空、意気揚々と手にいれたかどちん新作の感想です。
作品の内容についても触れているので、未読の方は閲覧を控えたほうがよろしいかと存じます。



■■■ブギーポップ・クエスチョン『沈黙ピラミッド』 感想■■■


■約1年半ぶりの新作

ブギーポップ・クエスチョン『沈黙ピラミッド』

ブギーポップ・クエスチョン『沈黙ピラミッド』

  • 出版社/メーカー: メディアワークス
  • 発売日: 2008/01/10
  • メディア: 文庫




ずいぶん久しぶりだなーと思ったら一年半ぶりの新作とかw
いくら「事件」シリーズやメフィストとかで書いていたとはいえ、メインシリーズ一年半放置って
一体どこの冨樫かと。

「事件」シリーズやナイトウォッチなど、上遠野先生の作品はどれも好きなのですが
やはりブギポシリーズが一番「原点」という感じで私は好きです。
(まあどれも微妙なラインでリンクしているといえばしてるのですが)

今回のテーマは「生と死」…に見せかけた意識と記憶のお話。
…と思いきや主軸はむしろ合成人間とか普通の人間とかを超えた友情恋愛三角関係+α。
各章の題目は以下の通り。

  1. 死神ってなんですか? …(ヒント)あまり真面目に考えないように。
  2. 生死ってなんですか? …(ヒント)経験者に訊きたくても無理です。
  3. 真実ってなんですか? …(ヒント)言った者勝ちなのが困りものです。
  4. 失恋ってなんですか? …(ヒント)何度しても苦しいものです。
  5. 仲間ってなんですか? …(ヒント)すべては自分から信じることです。
  6. 友情ってなんですか? …(ヒント)結局は相手次第です。
  7. 絶望ってなんですか? …(ヒント)いくら消してもなくなりません。
  8. 記憶ってなんですか? …(ヒント)思ったよりアテになりません。
  9. 世界ってなんですか? …(ヒント)実はかなりいい加減ですが、許してはくれません。
  10. 正解ってなんですか? …(ヒント)………。

各章が「QUESTION」の構成で、扉絵に緒方氏のちま絵と一緒に質問とヒントが。
決して「正解」でないあたりが嫌らしい。

途中までは一般論のような回答を述べているように見えて「世界」については
いきなりブギーの話になるのが笑いどころか。

(以下ネタバレのため要反転)

今回は何となく「パンドラ」を思わせるようなつくりになってる気がしましたね。

平和な日常とかわいい合成人間とカップルにも親友にもなりきれなかった男女の
激しくもグロテスクなバトルがメインにあるようにみせかけて、実は彼らの
切なくて哀しい出会いと別れが主軸の、つまりいつものブギーポップでした。

何となく言いたいことは分かるんだけど言葉にすると逃げていくような曖昧な概念を
質問とヒントの形で提示して読者を悩ませる、上遠野節の真骨頂が炸裂。
あんたは禅僧かソクラテスか。


(ネタバレ終了)

しかし一年半ぶりに読んでみるとやっぱり好きだなコレ。
「ラノベ界のJOJO」と呼ばれている(勝手に呼んでるだけ、ともいう)ブギポですが
最近はネウロっぽいんじゃないかとも思える今日この頃。

そうするとブギーはネウロで、炎の魔女(それとも末真博士?)は弥子か。
そしてシックスは統和機構で犯人たちはMPLSとかw
HALなんかは現代版イマジネーターにでも置き換えられるような気がしてくるから怖いw

この辺は突き詰めるとネウロファン、上遠野ファン双方に怒られそうなので
勝手に妄想しているだけと言うことで適当に流してください、スミマセン。


以前も書いたのですが、もしネウロが小説化されるときがあったら
そのときはかどちんに書いて欲しいなーと思ったこともありました。
まあそれはもう終わった話なのでどうでもいいのですが。
(いや小説版ネウロは読んでないのだけれど)

上遠野先生なら犯人の豹変シーンも崩壊シーンも余すところなく描写して
くれるんじゃないかと思ったのですが。
まあネウロの豹変シーンがむしろ嬉々として本性をむき出しにするのに対して
ブギポの豹変(?)はもうすでにあらかたやられてズタボロになった「敵」が
最期に見せる足掻きにしかならないというところはちょっと哀しい気もします。

…まあネウロの豹変も最期のあがきという点はなんら違いはないか。


閑話休題。



■能力バトル

マンガでもアニメでもラノベでもゲームでもいわゆる「能力バトル」モノにおいて
一人一能力というのは結構重要な縛りですね。
能力だけ見るとどうでもいいようにしか見えないものでも、使い方によっては
世界を変革させるだけの恐ろしいものに変化したりして。

また、どうしようもなく矮小な能力も、相手との「相性」によっては強力な武器になったり、
怒りっぽいとか恥ずかしがりやだとかどこにでもあるような「性癖」みたいなものが
「能力」になったとたんにむちゃくちゃ強くなってたり。

で、そんなものはおよそ人間一人の精神ではとても抑えられるようなものではなくて
支えてくれる人がいないと最後には自滅して崩壊してしまうんだよー的なオチが
かろうじてこの作品をラノベというジャンルに留めている、ような気がしなくもない。

じゃあそれがなくなったら何になるんだ、と聞かれてもわかりませんが。


…また話がそれた。


まあ結局のところ、被害者も加害者も統和機構の合成人間もMPLSも正義の味方も
世界の一部であることからは逃れられない「普通の存在」であるということが前提で、
だからこそ「どんな能力も通用しない」、「世界にただ一人立つ」ブギーポップが
逆に作品世界のなかでは「異質な存在」となっているところがこの作品の魅力かと。

てか能力バトルモノで「どんな能力も通じない」って詐欺でしょ、詐欺。



■挿絵について

そういえば最近「カラーとモノクロのギャップが激しい」といわれる緒方氏のイラストですが、
今回はわりと少なめ…かと思いきや挟み込まれていた「電撃の缶詰」に描かれている
イラストに思わず目を疑ってしまったという、思わぬカウンターパンチ。




一体何があったんダ━━ヽ( ;´Д`)ノ━━!!!!

ちなみに今回ブギーは出てくるけど炎の魔女は出てこないし、
ましてや幼女なんてことは全くありません、この嘘つきペーパーめが!
よく見てみたら幼く描かれているだけで幼女というわけでは無いような気も。しかしスク水…

(またネタバレのため反転)

しかしシリーズ初見の人がこのイラストを見て、「かわいい幼女が2人コスプレして
何者かと戦う話」
ともし勘違いして買ったらキレるんじゃないだろうか…

実際私もシリーズ最初から読んでるから「統和機構」や「合成人間」も”普通”のものとして
受け取る事が出来ますが、もしこの本で初めてブギーポップに触れたと言う人がいたら
あまりの非日常的な単語の連続に思わず「なんだこりゃ」と声をあげる確率100%。

例えるなら『スティール・ボール・ラン』から読み始めた人がいきなり「スタンド」の概念を
説明されても「何でそれが常識になってるの」としか思えないような感じ。

分かりにくくてスミマセン。


閑話休題(本日3回目)


えーと、何の話をしてたんだっけ、ってそうそうイラストの話でした。
今回はとにかく各章扉にでてくるキャラクターの2頭身ちま絵がカワイイ。
あまりにデフォルメしすぎてどのキャラか分からないのもいるのがアレですが。

個人的にはブギーのちま絵がなかったのが残念。
まあいいかスク水があるから(ぇ


なんとなくブギーのちま絵が欲しくなったので描いてみた。




微妙に可愛くないのは仕様です(オイ



■以下真面目に感想(反転しないのでネタバレ注意)



毎回各作品がクロスリンクしていることで有名なこのシリーズで
一番重要となっているのは「今回の舞台の時系列」なのですが、

スプーキーEがまだ生きていて、かつ右耳がなくなっているというところから
イマジネーター下巻のあたりということが推測されます。
最近シリーズを読んでなかったので詳細な時期はすぐには浮かばないのですが、
藤花の受験に失敗、綾の自殺未遂、などの情報からさらに特定できそうな予感。

…もするけどその辺は他にも誰かやってるだろうからその方に任せるとして(丸投げ)


それにしてもスプーキーEはむしろ死んでからその評価が上がるいい例ですね。
始めは単なる洗脳能力だけを持つただのデブだったのに、意外な影響力を持ってたり
いろんな合成人間に情報を提供していたり…と、単に使いやすいだけなのかも。

また別の意味でどんどん評価がインフレし続けているのがイマジネーター
いつか彼女とブギーポップの戦いが書かれる事を期待しているのですが、
こうまで気を持たせられると生半可なオチでは読者を満足させられないのではないかと
勝手に心配してたり信頼してたりします。

てかまだかー、まだなのかー。


まだかまだか、と言えば以前「電撃hp」でビートを連載する前に書いていた
「メタル・グゥルー」とかの短編外伝作品はいつになったら文庫化されるんですかね。
いくつか見逃したのもあってずっと待っているのですが。


また話がそれた(本日4回目)orz



■今回の登場人物について

今回はとにかくメロー・イエローが可愛かった。
特にエピローグのエピソードは「このままの時間がずっと続けばいいのに」の典型で。
日常と言うのはなくなってみないとそのありがたみが分からないと…。

そして毎回何気に騒動の中心にいるように見えて本人は全く無風地帯な竹田先輩
そういえばなぜ藤花が彼を好きになったのかとかいうエピソードも全くないんだっけか。
宇宙人や合成人間が跳梁跋扈するこの世界、「普通」であることの方が逆に珍しい。

さて今回の能力は”中二階(メザニーン)”
能力の名づけ親はまたもや登場の末真博士。彼女も何気に無風地帯。
初見で「中二病」と読んでしまったのは私が病んでいるのかそれとも狙ったものなのか。

「終わらせる」ために致死的な能力を自らに使った真下幹也(の意識)、
変わり果てた幹也クン(本体)を一目見て彼だと認識した小守時枝
最後まで彼女を助けようとした館川睦美に、その願いをかなえたメロー・イエロー
そしてブーメランの最期の言葉を守り、任務を完遂したダウン・ロデオ

結局のところ「強さ」とはその能力自体の事を指すのではなく
最後には「心の強さ」とか「友情(愛情)の深さ」に帰結するのが
ブギーポップやその派生シリーズが少年漫画的といわれるゆえんじゃないかと密かに思ってます。

今回ラストで合成人間となってしまった彼女は今後のシリーズに登場してくるのか
それともすでに登場した合成人間のどれかなのかはよく分かりませんが、
とりあえずまだまだ続きそうなこのシリーズ、ゆっくりでいいから質の高い作品を
長く書き続けていって欲しい、そんな気がした日曜の朝でした。




- - - - - - - - -



以上、突発感想ブギーポップでした。

あー読了したらなんか無性に過去作読み返したくなってきた…。
確認のためにwikiとか読んでみたら結構私の知らない未収録作品が数多くあるんですね。

どこの富樫かとか言ってごめんなさい。


てか早く未収録作品を文庫化してください(切実)!


それでは。




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コメント 2

通行人

ちま絵があまりに可愛くて立ち止まりました

読了してなお自分は今回の敵の正体を把握できていません
あれは誰だったのでしょうか・・・?
by 通行人 (2008-09-08 02:09) 

常磐

>通行人様

すっかり遅くなりまして本当に申し訳ありません。
「敵」の正体は…私もよくわかりませんでしたorz

ちま絵を気に入っていただき嬉しいです。
by 常磐 (2010-03-20 11:41) 

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